
自己分析から始めるやりたいことの見つけ方
「やりたいことが見つからない」という悩みは、まるで出口のないトンネルを歩いているような心細さがありますよね。私自身もかつて、日曜日の夜になるたびに「また明日から同じ一週間が始まるのか」とため息をついていた時期がありました。だからこそ、その焦りや不安な気持ち、痛いほどよくわかります。
でも、断言させてください。やりたいことは、空から降ってくる啓示のようなものでも、どこか遠くの国にある宝箱でもありません。それは、これまでのあなたの人生の中に既に散りばめられている「欠片」を拾い集め、丁寧に繋ぎ合わせることで見えてくるものです。ここでは、脳科学や心理学の知見も借りながら、論理的かつ体系的に、あなたの内側に眠る「正解」を掘り起こすプロセスを一緒に歩んでいきましょう。

やりたいことがわからない心理と脳科学的な原因
「自分にはやる気がないんじゃないか」「飽きっぽい性格だからダメなんだ」と、自分を責めてしまっていませんか?実は、やりたいことが見つからない原因の多くは、あなたの性格や能力の問題ではなく、脳の仕組みや現代社会特有の環境要因にあるんです。
脳科学の視点から紐解くと、私たちのモチベーションには大きく分けて「ドーパミン型」と「ノルアドレナリン型」の2つのエンジンが存在します。この違いを理解することが、最初の重要なステップです。
| タイプ | 動機の源泉 | 特徴とリスク |
|---|---|---|
| ノルアドレナリン型 (回避型) | 恐怖、不安、義務感 (例:怒られたくない、失敗したくない、生活のために稼がなきゃ) | 短期的には爆発的な集中力を生みますが、ストレスホルモンを伴うため、長く続くと「燃え尽き(バーンアウト)」や無気力を引き起こします。 |
| ドーパミン型 (報酬予測型) | 快感、好奇心、ワクワク (例:もっと知りたい、やってみたい、楽しいから続く) | これこそが「やりたいこと」の正体です。疲れを感じにくく、行動自体が報酬となるため、自然と継続できます。 |
日本の教育システムや多くの職場環境では、「宿題を忘れたら廊下に立たされる」「ミスをしたら評価が下がる」といった、ノルアドレナリン型の動機付けが優位になりがちです。真面目な人ほど、長年にわたって「〜すべき(Must)」という基準で行動し続けてきた結果、脳が常に緊急モードになり、本来感じるはずの「〜したい(Want)」というドーパミン系の信号をノイズとして処理してしまうようになります。これが、「やりたいことがわからない」という感覚の脳科学的な正体です。

また、心理学的な側面からは「他者評価への過剰な適応」も意識する必要があります。SNSでキラキラした他人を見て「自分は何者でもない」と落ち込んだり、周囲の期待に応えようとして「いい人」を演じ続けたりしていませんか?他人の顔色を伺いすぎると、自分の本音がわからなくなってしまう「自己疎外」という状態に陥ります。
もしあなたが、「人当たりがいいと言われるけれど、実はすごく疲れている」と感じることがあるなら、それは自分軸ではなく他人軸で生きているサインかもしれません。まずは自分の心の声を聴くセンサーを取り戻すことから始めましょう。
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自己分析の質問に答えて価値観を明確にする
自分軸を取り戻すための最も強力なツールは「問い」です。ただし、単に好きな食べ物を聞くような浅い質問ではなく、あなたの無意識領域にダイブするような深い質問が必要です。特に重要なのは、行動の指針となる「価値観(Being)」を明確にすることです。
価値観とは、あなたが人生において「どんな状態でありたいか」というコンパスのようなものです。以下の質問に対し、できれば時間を取ってノートに書き出しながら、じっくり自分と対話してみてください。
自分を知るための深掘り質問リスト
- Q1. 時間を忘れて没頭してしまった経験はありますか?
いわゆる「フロー状態」に入った経験です。子供の頃の遊びでも、仕事での特定の作業でも構いません。「時間を忘れる」ということは、脳がドーパミン全開の状態であった証拠です。 - Q2. 「お金」が十分にあって働く必要がなくても、ついやってしまうことは?
これは「ライスワーク(食べるための仕事)」と「ライフワーク(生きがい)」を切り分ける究極の質問です。そこに残ったものこそが、あなたの魂が求めている活動です。 - Q3. 他人のニュースやSNSを見て、思わず「嫉妬」してしまったことは?
嫉妬は醜い感情として蓋をされがちですが、自己分析においては最強のセンサーになります。人はどうでもいい相手には嫉妬しません。「悔しい」と感じるのは、あなたが「本当はそれをやりたい」「自分にもできるはずだ」と思っているからです。嫉妬の対象を分析すれば、隠れた願望が丸裸になります。 - Q4. 今までの人生で、絶対に許せないと感じた出来事は?
強い怒りは、あなたの「大切な価値観」が侵害された時に生まれます。「理不尽に怒られて許せなかった」なら「公平・正義」を大切にしているのかもしれません。「束縛されて辛かった」なら「自由」がコアな価値観かもしれません。
これらの質問に答えるときは、「立派なことを書こう」としないことがポイントです。誰に見せるわけでもありません。泥臭くても、わがままでも、それがあなたの本音なら、それが正解です。自分の本音を認めることは、自己肯定感を高める第一歩でもあります。

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世界一やさしいメソッドと3つの円のフレームワーク
「感覚的なことはわかったけど、もっと論理的に答えを出したい」という方には、キャリア論の分野で現在最も信頼されている「3つの円」のフレームワークをご紹介します。これは、ベストセラー『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』などの著者である八木仁平氏などが提唱している考え方で、非常に再現性が高いメソッドです。
やりたいことは、以下の3つの要素が重なり合う中心点に必ず存在します。

| 3つの要素 | 定義とポイント | 具体例 |
|---|---|---|
| ① 好きなこと (情熱 / Interests) | 興味・関心があり、努力しなくても自然と情報収集してしまう分野。「もっと知りたい」「問いかけたい」と感じる対象。 ※「消費(ゲームをする)」ではなく「生産(ゲームを作る)」視点で考えるのがコツ。 | 心理学、ファッション、ITガジェット、環境問題、教育、キャンプ |
| ② 得意なこと (才能 / Talents) | 無意識に人よりうまくできてしまう思考や行動のパターン。後天的な「スキル(英語・プログラミング)」ではなく、先天的な「資質」に近いもの。 自分では当たり前すぎて気づきにくい。 | 情報を整理する、人の感情を察する、リスクを見つける、戦略を立てる、場を和ませる |
| ③ 大事なこと (価値観 / Values) | 人生で大切にしたい状態。なぜ働くのか、どう生きたいかという指針。 これがないと、どんなに楽しい仕事でも「虚しさ」を感じてしまう。 | 自由に生きたい、人に安心感を与えたい、夢中でありたい、勝ち負けにこだわりたい |

この3つを組み合わせることで、キャリアの公式が完成します。
【やりたいことを見つける公式】
ステップ1: 好きなこと × 得意なこと = やりたいこと(Do)
まずは、自分の興味のある分野(好き)で、自分の強み(得意)を活かす具体的な活動を見つけます。例えば、「心理学(好き)」×「わかりやすく伝える(得意)」=「心理カウンセラーやセミナー講師」といった形です。
ステップ2: やりたいこと × 大事なこと = 本当にやりたいこと(Mission)
そして、その活動が自分の価値観(大事なこと)に合致しているかを確認します。「心理学を教えることで、自信を持てる人を増やしたい(価値観)」まで繋がったとき、それは一生モノのライフワークへと昇華されます。
多くの人が失敗するのは、「好きなこと(単なる趣味)」をそのまま仕事にしようとしたり、「得意なこと(単なる作業)」だけで仕事を選んでしまったりするからです。この3つの要素のバランスを整えることが、納得感のあるキャリアへの近道です。

無料の診断ツールや適職診断を活用するヒント
「自分の強みなんて自分ではわからない」という場合は、テクノロジーの力を借りましょう。客観的なデータは、主観的な思い込みを打破する良いきっかけになります。ただし、有料の高額なセミナーなどにいきなり申し込む必要はありません。現在は、国や大手企業が提供している非常に精度の高い無料ツールが存在します。
おすすめの診断ツール
- 厚生労働省『job tag(日本版O-NET)』
国の公的な職業情報データベースです。「職業興味検査」「価値観検査」などの本格的な診断が無料で受けられ、その結果に基づいた具体的な職業名や、その仕事に就くためのルートまで詳細に知ることができます。信頼性は抜群です。
(出典:厚生労働省『職業情報提供サイト(job tag)』) - グッドポイント診断(リクナビNEXT)
転職サイトのリクナビNEXTが提供しているツールですが、転職する気がなくても利用価値が高いです。あなたの「強み」を5つのキーワードで言語化してくれるため、自己PRや「得意なこと」の発見に直結します。 - 16Personalities(性格診断テスト)
SNSでも話題になることが多い性格診断です。楽しみながら自分の性格タイプを知ることができ、「なぜ自分はこういう場面でストレスを感じるのか」という傾向を理解するのに役立ちます。
診断結果に振り回されないための注意点
診断結果を見て「当たってる!」と喜ぶのも良いですが、もっと大切なのは「違和感」を感じた部分です。「適職は営業職」と出たけれど「絶対に嫌だ」と感じたなら、そこにはあなたの強固な価値観(やりたくないこと)が隠れています。ツールは答えを教えてくれる先生ではなく、自分自身と対話するための「鏡」として利用してください。
書くことで思考整理するノート術と書き方
頭の中だけで考えていると、思考は堂々巡りをしてしまいます。悩みを目に見える形にする「思考の外部化」を行いましょう。ノートとペンを用意するだけでできる、効果抜群のワークをいくつかご紹介します。
1. モチベーショングラフ
これは、自分の過去を振り返り、モチベーションの波を可視化する最強のツールです。
- 軸を書く: ノートに大きなグラフを書きます。縦軸を「モチベーション(+100〜-100)」、横軸を「時間(幼少期〜現在)」とします。
- 点を打つ: 入学、卒業、就職、部活での成功、失恋、挫折など、人生の転機となった出来事の時の自分の気持ちの高さに点を打ちます。
- 線を繋ぐ: 点を線で繋ぎ、人生の曲線を描きます。
- 深掘り分析(ここが最重要):
- 山の頂点(ピーク): なぜ最高に楽しかったのか?(例:チームで協力したから、難問が解けたから、人に感謝されたから)→ ここに「得意なこと」と「好きなこと」があります。
- 谷の底(ボトム): なぜ辛かったのか?(例:自由がなかったから、ルーチンワークだったから、人間関係が悪かったから)→ ここに「絶対に譲れない価値観」があります。

このグラフを書くことで、自分のやる気のスイッチがどこにあるのか、客観的に把握できるようになります。
2. ブレインダンプ(書き出し)
制限時間を設けて(例えば15分)、頭に浮かぶ「やりたいこと」「気になること」「今の不満」をすべて書き出す手法です。「ハワイに行きたい」といった欲望から、「部屋を片付けたい」という日常のタスクまで、とにかく全部吐き出します。脳内のメモリを解放することで、本当に大切なことに思考のリソースを使えるようになります。
書くことを習慣にすると、日々の小さな変化や自分の感情の揺れ動きに敏感になれます。「継続は力なり」と言いますが、まずは1日1行でもいいので、自分の心模様を記録することから始めてみませんか?

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